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「心理臨床と共時性について」講演会を開催しました(企画:カウンセリングセンター)

2012年度

2月25日(月)に、京都光華女子大学の今西徹先生をお招きし、「心理臨床と共時性」というテーマでお話しいただきました。
今西先生はまず、共時性synchronicityというユング派精神分析における概念についてご説明されました。こころの世界における事象と外的な世界における事象が、時間的にほぼ同時に起こることだというご説明でした。C. G. ユング自身が挙げている例は、およそこのようなものだそうです。「カウンセリング中、ある相談者がスカラベ(コガネムシ)が登場する不思議な夢を見たということをカウンセラーに報告していたまさにそのとき、ガラス窓をたたく音がした。近づいてみると、コガネムシが窓ガラスにぶつかってきているところだった」。原因と結果の連鎖から物事を理解しようとする通常の認識では、これは単なる偶然の一致にすぎません。けれども、共時的な出来事の布置から物事を理解しようとする立場からは、「窓ガラスを叩くコガネムシ」は意味深いものと考えられるのではないかと今西先生は説明しておられました。
その後、長新太の「ブタヤマさん」という絵本シリーズを紹介していただき、主人公のブタヤマさんの身に起こる共時的な出来事の数々と、起きた出来事をどのようにブタヤマさんが受け止め、そのなかでブタヤマさんがどう変わっていったかについての心理臨床的解釈をお話しくださいました。絵本はひじょうにユニークで、参加学生はみな何度も笑っていましたが、先生の解釈を踏まえてみるとなかなか深いストーリーであることが感じられました。
ご講演に引き続き、先生を囲んで座談会がありました。自由な質疑応答が交わされたのですが、その中でも先生は、この「共時的なものを受け取る力」を育むことがカウンセラーになるためのトレーニングとして非常に重要であるということを述べられておられました。

心理臨床と共時性について

心理臨床と共時性について